プログラミング不要 Excel/Google Sheetsで学ぶデータ分析の基礎
データ分析を身につけるための第一歩
データに基づいた意思決定の重要性が高まり、多くの分野でデータ分析のスキルが求められています。しかし、データ分析と聞くと、専門的なプログラミング言語や高度な統計知識が必要だと感じ、難しそうだと考えてしまう方も少なくありません。特に、これからデータ分析を始めてみたいと考えている方にとっては、何から手をつければ良いのか、多くの情報の中で迷ってしまうこともあるでしょう。
データ分析を実践的に学ぶための最初のステップとして、必ずしも高度なスキルが必要というわけではありません。普段から多くの人が利用している表計算ソフト、例えばMicrosoft ExcelやGoogle Sheetsといったツールでも、データ分析の基礎を学ぶことは十分に可能です。これらのツールは視覚的に分かりやすく、プログラミングの知識がなくてもデータの整理や集計、簡単な分析を行うことができます。
この記事では、データ分析の入門として、ExcelやGoogle Sheetsを活用する方法に焦点を当てて解説します。これらのツールを使って、どのようにデータを扱い、基礎的な分析を行うのか、具体的なステップとともに見ていきましょう。
なぜExcelやGoogle Sheetsがデータ分析入門に適しているのか
ExcelやGoogle Sheetsは、多くのコンピュータに標準で搭載されていたり、無料で利用できたりすることから、非常に身近なツールです。データが表形式で表示されるため直感的に理解しやすく、マウス操作を中心にほとんどの作業が行えるため、専門的な学習コストが低いという利点があります。
これらのツールは、以下のようなデータ分析の基本的なタスクを行うのに適しています。
- データの整理と整形: 形式が不揃いなデータを統一したり、不要なデータを取り除いたりする作業
- データの集計: 合計、平均、個数などを計算して、データの全体像や特徴を把握する作業
- データの可視化: グラフなどを作成して、データの傾向やパターンを視覚的に捉えやすくする作業
プログラミング言語を習得する前に、まずは身近なツールを使ってこれらの基礎を実践することは、データ分析の考え方や基本的な流れを理解する上で非常に有効です。
Excel/Google Sheetsで実践するデータ分析の基本ステップ
ExcelやGoogle Sheetsを使ったデータ分析は、主に以下のステップで進めます。
1. データの準備と取り込み
分析したいデータをExcelまたはGoogle Sheetsに取り込みます。データはCSVファイルやテキストファイル、他のアプリケーションからコピー&ペーストするなど、様々な方法で取り込むことができます。データを取り込んだら、分析しやすいようにデータの形式を確認し、必要に応じて整理します。例えば、日付データの形式を統一したり、数値として扱いたいデータが文字列になっていないかなどを確認します。
2. データの整理と整形
データが取り込めたら、分析に適した形に整えます。 * 重複データの削除: 同じデータが複数行存在する場合は、重複を削除して正確な集計ができるようにします。 * 欠損値の処理: データが抜け落ちている(欠損している)箇所があれば、それを特定し、削除するか、平均値などで補完するかといった対応を検討します。 * データの分割/結合: 一つのセルに複数の情報が含まれている場合(例: 氏名が「姓 名」で入っている)、それを分割したり、逆に複数の列の情報を結合したりします。
ExcelやGoogle Sheetsには、これらの作業を支援する便利な機能があります。「データの区切り位置指定ウィザード」(Excel)や「テキストを列に分割」(Google Sheets)などが役立ちます。
3. データの集計と要約
整理されたデータを使って、集計や要約を行います。これにより、データの全体的な傾向や特徴を把握します。
- 基本的な関数:
SUM
(合計)、AVERAGE
(平均)、COUNT
(個数)、COUNTIF
(条件付き個数)、SUMIF
(条件付き合計)などの関数は、データの基本的な集計に不可欠です。 例えば、商品の売上データに対して、特定の商品カテゴリの合計売上を知りたい場合はSUMIF
関数が使えます。 - 並べ替えとフィルター: データを特定の列の値で並べ替えたり、条件に合致する行だけを表示したりすることで、特定の情報に絞って確認できます。
- ピボットテーブル: これはExcel/Google Sheetsにおけるデータ集計・分析の中心的な機能の一つです。複雑な集計(例: 商品カテゴリ別、地域別の月間売上合計)を、マウス操作で簡単に行うことができます。行、列、値に項目をドラッグ&ドロップするだけで、様々な角度からの集計表を自動的に作成できます。データ集計の強力なツールとして、ぜひ使い方を習得したい機能です。
4. データの可視化
集計した結果や、元のデータの傾向を視覚的に表現します。グラフを作成することで、数値の羅列では気づきにくいデータの特性やパターンを直感的に理解できます。
- グラフの種類: データの種類や伝えたい内容に応じて適切なグラフを選択します。
- 棒グラフ: 項目間の比較(例: 商品カテゴリ別の売上比較)
- 折れ線グラフ: 時系列の変化(例: 月ごとの売上推移)
- 円グラフ: 全体に対する各項目の割合(例: 商品カテゴリ別の売上構成比)
- 散布図: 2つの変数間の関係(例: 広告費と売上高の関係)
- グラフの作成: グラフにしたいデータ範囲を選択し、挿入タブからグラフの種類を選択するだけで簡単に作成できます。グラフのタイトル、軸ラベル、データラベルなどを適切に設定することで、より分かりやすいグラフになります。
より高度な分析へのステップ
ExcelやGoogle Sheetsだけでも様々な分析が可能ですが、扱うデータ量が大きくなったり、より複雑な統計分析を行いたい場合は、これらのツールだけでは限界があります。例えば、数十万行、数百万行といった大規模なデータを扱う場合や、機械学習を用いた予測分析などを行う場合は、PythonやRといったプログラミング言語や、専門的なデータ分析ツールが必要になります。
しかし、ExcelやGoogle Sheetsを使ったデータ分析の経験は、これらのより高度なツールや技術を学ぶ上での貴重な土台となります。データの構造理解、集計や可視化の考え方、分析のワークフローといった基礎は共通しているためです。
まとめ
データ分析を始めたいと考えている方にとって、ExcelやGoogle Sheetsは非常に有効な入門ツールです。プログラミングスキルがなくても、データの準備、整理、集計、可視化といったデータ分析の基本的なプロセスを実践的に学ぶことができます。
まずは、身近なデータ(例えば、家計簿データ、ウェブサイトのアクセスデータの一部など)を使って、この記事で紹介した基本的な関数やピボットテーブル、グラフ作成機能を試してみてください。実際に手を動かすことが、データ分析スキル習得への一番の近道です。これらのツールでデータ分析の基礎を固めた後で、必要に応じてPythonやRといったより強力なツールへとステップアップしていくことを検討すると良いでしょう。
データ分析の旅は、まず身近な一歩から始まります。ExcelやGoogle Sheetsを活用して、ぜひデータの世界に触れてみてください。