スキルUP!データ分析実践

はじめてのデータ分析実践:簡単なデータセットで学ぶ演習ステップ

Tags: データ分析, 初心者, 実践, 演習, ステップ

データ分析に関心を持ち始めたものの、何から始めれば良いか分からないという方は多いかもしれません。オンライン上には多くの情報があふれており、どの情報に注目すれば良いのか判断に迷うこともあるでしょう。特に技術的な専門知識がほとんどない場合、プログラミング言語や難解な統計理論を目にすると、尻込みしてしまうこともあるかと思います。

データ分析スキルを身につける上で最も効果的な方法は、実際に手を動かしてみることです。机上の学習だけでは得られない気づきや理解があります。しかし、「実際に分析するデータなんて持っていない」「どんなツールを使えば良いか分からない」と感じるかもしれません。

この記事では、複雑なプログラミングや専門ツールは使わず、身近な表計算ソフト(Microsoft ExcelやGoogle Sheetsなど)と、簡単なデータセットを使って、データ分析の基本的な一連の流れを体験する実践的な演習ステップをご紹介します。この演習を通じて、データ分析がどのようなプロセスで進められるのかを肌で感じていただければと思います。

データ分析実践演習の準備

この演習を始めるにあたり、特別な準備はほとんど必要ありません。普段お使いのPCに表計算ソフトがインストールされているか、またはGoogleアカウントがあればGoogle Sheetsを使用できます。

次に、演習に使うデータセットを用意します。ここでは、シンプルで構造が分かりやすい、以下のような架空の店舗売上データを使用することを想定します。

| 注文日 | 商品カテゴリ | 商品名 | 売上金額 | 顧客ID | 支払い方法 | | :------- | :----------- | :-------- | :------- | :------ | :--------- | | 2023/01/05 | 食品 | パスタ | 500 | 001 | クレジット | | 2023/01/05 | 飲料 | コーヒー | 300 | 002 | 現金 | | 2023/01/06 | 食品 | パスタ | 500 | 003 | クレジット | | 2023/01/06 | 雑貨 | エコバッグ | 1500 | 001 | クレジット | | 2023/01/07 | 飲料 | 紅茶 | 350 | 004 | 現金 | | ... | ... | ... | ... | ... | ... |

このようなデータは、CSV(Comma-Separated Values)形式やExcel形式で提供されることが多いです。インターネット上の公開データサイト(政府統計の総合窓口 e-Statなど)で練習用のデータを探すか、練習用に自分で簡単なデータを作成してみるのも良いでしょう。今回は、数百行程度のシンプルなデータセットを想定します。

データファイルが準備できたら、表計算ソフトでファイルを開いてください。

ステップ1:データの読み込みと概要把握

データ分析の第一歩は、データを表計算ソフトに読み込み、その全体像を把握することです。

  1. データの表示: ファイルを開くと、データがスプレッドシート形式で表示されます。各列がデータの種類(例:注文日、売上金額)、各行が個別の記録(例:一つの注文)を表していることを確認します。
  2. 行数と列数の確認: データがどれくらいの量があるのか、含まれている情報の種類はいくつかを確認します。Excelであれば画面下部に表示されることが多く、Google Sheetsでも行と列の番号で確認できます。
  3. 各列の内容確認: 各列にどのような種類のデータが入っているか(数値、文字、日付など)を確認します。データの形式が分析に適しているか、予期しないデータが入っていないかなど、ざっと眺めてみます。
  4. 簡単な集計値の確認: 売上金額の列で、平均、合計、最大値、最小値などの簡単な統計量を確認してみましょう。ExcelやGoogle Sheetsの関数(AVERAGE, SUM, MAX, MINなど)を使用すると簡単に計算できます。これらの値から、データの傾向や異常値の有無について大まかな感触を得ることができます。

この段階では、データを「見る」ことに重点を置きます。データにどのような情報が含まれているのか、大まかな特徴は何かを理解することが目的です。

ステップ2:データの「掃除」(簡単な前処理)

実際のデータは、分析に適した形になっていないことがよくあります。例えば、一部のデータが欠けていたり(欠損値)、形式が統一されていなかったりします。分析に進む前に、データを「掃除」する簡単な前処理を行います。

  1. 欠損値の確認: データの中に空欄(欠損値)がないかを確認します。表計算ソフトのフィルター機能を使うと、空欄の行を絞り込んで表示することができます。今回の簡単な演習では、欠損値がある行は分析から除外するか、単純な値(例:数値列なら平均値や0)で埋めるといった簡単な対応を想定します。
  2. データ形式の確認と修正: 日付が文字列として認識されていたり、数値として扱いたいデータが文字として入力されていたりすることがあります。表計算ソフトの機能を使って、適切なデータ形式に修正します。例えば、日付として認識させることで、後で期間ごとの集計が容易になります。

複雑な前処理は専門知識が必要ですが、このステップでは「データはそのままでは使えないことがある」「分析前にデータを整える作業が必要である」ということを理解することが重要です。

ステップ3:データの可視化

データをグラフにすることで、数値や表だけでは気づきにくいパターンや傾向を発見しやすくなります。データ分析における可視化は、データの分布や関係性を直感的に理解するために非常に有効です。

  1. グラフ作成: 表計算ソフトのグラフ作成機能を使ってみましょう。例えば、
    • 「注文日」と「売上金額」を使って、日ごとの売上推移を折れ線グラフで表示する。
    • 「商品カテゴリ」ごとの売上合計を棒グラフで表示する。
    • 「支払い方法」別の件数を円グラフで表示する。
  2. グラフからの洞察: 作成したグラフからどのような情報が読み取れるかを考えてみます。例えば、「週末に売上が伸びる傾向がある」「特定のカテゴリの売上が突出している」「クレジットカード払いの割合が高い」など、データの特徴が視覚的に捉えられます。

どのようなグラフを選ぶかは、見たいデータの種類や関係性によって異なります。ここでは、いくつかの基本的なグラフを作成してみて、視覚的にデータを理解する練習をします。

ステップ4:簡単な分析と解釈

可視化で傾向を掴んだら、次に具体的な疑問に対してデータを集計したり比較したりする分析を行います。複雑な統計解析は行わず、表計算ソフトの集計機能を使った基本的な分析を行います。

  1. データの集計: 「商品カテゴリ」ごとの売上合計や平均売上、支払い方法別の注文数など、特定の切り口でデータを集計してみましょう。表計算ソフトのピボットテーブル機能は、このようなクロス集計を簡単に行うのに非常に役立ちます。ピボットテーブルを使って、「商品カテゴリ」を行に、「支払い方法」を列に、集計値に「売上金額の合計」を設定すると、「各商品カテゴリの、支払い方法別の合計売上金額」を一覧で表示できます。
  2. 分析結果の解釈: 集計結果やグラフから得られた情報をもとに、データが何を語っているのかを考え、解釈します。「食品カテゴリは売上は高いが現金払いの比率が高い」「エコバッグは高単価だが特定顧客のリピートが多い可能性がある」といった具体的な示唆を導き出してみます。なぜそのような結果になったのか、背景にある要因は何だろうか、次にどのような疑問を持つべきか、といった思考を進めることが、データ分析の本質的なステップです。

このステップでは、データから具体的な情報を引き出し、それに対して「なぜだろう?」「これは何を意味するのだろう?」と問いかけ、自分なりの解釈を試みることが重要です。

今回の演習から得られることと次のステップ

簡単なデータセットと身近なツールを使った今回の演習を通じて、データ分析の基本的な流れを体験できたかと思います。

  1. データ分析の全体像: データ分析は、データを準備し、特徴を掴み、可視化で傾向を発見し、集計や比較で詳細を分析し、そしてそこから意味を解釈するという一連のプロセスであることを理解できたでしょう。
  2. 実践の重要性: 実際に手を動かしてツールを操作し、データを扱うことで、座学だけでは得られない具体的な感覚やスキルが身につきます。
  3. 身近なツールの可能性: 高度な専門ツールを使わなくても、身近な表計算ソフトでもデータ分析の基本的な考え方や操作を体験できることを実感できたでしょう。

今回の経験は、データ分析学習の貴重な第一歩となります。この経験を元に、さらにスキルアップを目指すための次のステップを考えてみましょう。

データ分析スキルは、継続的な学習と実践によって磨かれます。今回の演習で得た感覚を忘れずに、興味のある分野や次に学びたいテーマを見つけて、ぜひ学習を続けてみてください。

まとめ

この記事では、データ分析の初心者向けに、簡単なデータセットと表計算ソフトを使った実践的な演習ステップをご紹介しました。

  1. データの準備と概要把握
  2. 簡単な前処理
  3. データの可視化
  4. 簡単な分析と解釈

これらのステップを通じて、データ分析の一連の流れを体験し、その重要性を実感できたことと思います。データ分析の世界への第一歩として、この演習が皆様の今後の学習のヒントとなれば幸いです。まずは身近なデータを使って、今回ご紹介したステップを繰り返し実践してみることをお勧めします。