データ分析で役立つグラフの種類と選び方:初心者向け実践ガイド
データ分析における可視化の重要性
データ分析を進める上で、「可視化」は非常に重要なステップです。可視化とは、データをグラフや図などの視覚的な形式で表現することです。これにより、数値や文字の羅列では捉えにくいデータの傾向、パターン、外れ値などを直感的に理解できるようになります。データ分析の初心者にとって、可視化は複雑な統計手法を学ぶ前にデータの全体像を掴むための強力なツールとなります。
また、分析結果を他の人に説明する際にも、グラフは言葉だけよりもはるかに効果的に情報を伝達できます。会議での発表やレポート作成など、様々な場面でデータ可視化のスキルは役立ちます。しかし、どのようなグラフを選べばデータを適切に表現できるのか、迷ってしまうこともあるかもしれません。この記事では、データ分析でよく使われる基本的なグラフの種類と、それぞれのグラフがどのようなデータや目的に適しているのかについて、分かりやすく解説します。
データを理解するための代表的なグラフの種類
データ可視化には様々なグラフが存在しますが、まずは基本的なグラフの種類とその用途を理解することから始めましょう。ここでは、特に利用頻度の高いグラフをいくつかご紹介します。
1. 棒グラフ(Bar Chart)
- 特徴: 複数のカテゴリや項目の値を、棒の長さで比較するグラフです。
- 適したデータ・目的:
- カテゴリごとの合計値や平均値などを比較する場合。
- 例: 製品別売上高の比較、地域別人口の比較。
- ポイント: 棒の順序を意味のあるもの(降順や昇順など)にすると、大小関係がより分かりやすくなります。
2. 折れ線グラフ(Line Chart)
- 特徴: 連続するデータの変化や傾向を、点を線で結んで表現するグラフです。
- 適したデータ・目的:
- 時間の経過に伴うデータの推移を表示する場合(時系列データ)。
- 例: 月ごとの気温の変化、株価の変動、ウェブサイトのアクセス数の推移。
- ポイント: 複数の系列を同時に表示することで、それぞれの推移を比較できます。
3. 円グラフ・ドーナツグラフ(Pie Chart / Donut Chart)
- 特徴: 全体に対する各部分の割合(構成比率)を示すグラフです。円全体を100%として、各部分を扇形やリング状の面積で表します。
- 適したデータ・目的:
- 全体における各要素の比率を示したい場合。
- 例: 市場シェアの構成、アンケート回答者の年代別割合。
- ポイント: 要素が多すぎると見づらくなるため、通常は要素数を制限するか、「その他」としてまとめるのが望ましいです。複数の円グラフを並べて比較するのは避けるべきです。
4. ヒストグラム(Histogram)
- 特徴: 連続する数値データをいくつかの区間(ビン)に分け、各区間に含まれるデータの個数(度数)を棒の高さで示すグラフです。データの分布の形状を把握できます。
- 適したデータ・目的:
- 数値データのばらつきや分布の中心、形状(左右対称か、偏りがあるかなど)を確認したい場合。
- 例: 試験の点数の分布、顧客の購買金額の分布。
- ポイント: 棒グラフと似ていますが、ヒストグラムは区間が連続しており、棒の間に隙間がないのが一般的です。区間の分け方によって見え方が変わるため、調整が必要です。
5. 箱ひげ図(Box Plot)
- 特徴: データの分布を、中央値、四分位数(25パーセンタイル、75パーセンタイル)、最大値、最小値、外れ値などの要約統計量を用いて箱とひげで表現するグラフです。
- 適したデータ・目的:
- 複数のグループ間でのデータの分布を比較したい場合。
- データのばらつきや中心、外れ値の有無を素早く把握したい場合。
- 例: 異なるクラスのテスト点数の分布比較、地域別の家賃の分布。
- ポイント: ヒストグラムよりも詳細な分布の形状は分かりにくいですが、複数の分布をコンパクトに比較するのに優れています。
6. 散布図(Scatter Plot)
- 特徴: 2つの異なる種類の数値データの関係性を、平面上の点の集まりとして示すグラフです。
- 適したデータ・目的:
- 2つの変数間に相関関係(一方の値が増えると他方の値も増える/減るなど)があるかを確認したい場合。
- 例: 身長と体重の関係、広告費と売上高の関係。
- ポイント: 点のパターンから、正の相関、負の相関、無相関などを視覚的に捉えることができます。外れ値も発見しやすいです。
グラフを選ぶ際の基本的な考え方
適切なグラフを選ぶためには、以下の点を考慮することが重要です。
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分析の目的を明確にする:
- データを比較したいのか(棒グラフ、箱ひげ図)?
- データの推移を見たいのか(折れ線グラフ)?
- 全体の構成比を示したいのか(円グラフ)?
- データの分布を知りたいのか(ヒストグラム、箱ひげ図)?
- 変数間の関係性を探りたいのか(散布図)?
- これらの目的に合わせて、上記の代表的なグラフから最適なものを選びます。
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データの種類を把握する:
- 分析対象のデータがカテゴリデータ(質的データ)なのか、数値データ(量的データ)なのかを確認します。また、数値データの場合は離散値か連続値か、時系列データかどうかも考慮します。
- カテゴリデータの比較なら棒グラフ、時系列の数値データなら折れ線グラフ、数値データの分布ならヒストグラムや箱ひげ図、2つの数値データの関係性なら散布図など、データの種類によって適したグラフは異なります。
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誰に伝えたいのか(対象)を考慮する:
- グラフを見る人がデータ分析の専門家なのか、それとも一般的なビジネスパーソンなのかによって、グラフの複雑さや装飾の度合いを調整する必要があります。専門家向けであれば情報量を増やしても構いませんが、一般向けであればシンプルで分かりやすい表現を心がけるべきです。
良いグラフを作成するためのヒント
グラフを選ぶだけでなく、作成する際にもいくつかのポイントがあります。
- 明確なタイトルと軸ラベル: グラフが何を示しているのか、各軸が何を表しているのかを一目で理解できるようにします。
- 適切なスケールと目盛り: データの範囲を適切に表示し、誤解を招かないようなスケール設定を行います。
- 凡例(複数系列がある場合): 複数のデータ系列を扱う場合は、それぞれの意味が分かるように凡例をつけます。
- 色やデザインの工夫: 見やすく、伝えたい情報が際立つような色使いやデザインを検討します。ただし、過度な装飾はかえって分かりづらくなるため注意が必要です。
まとめ
データ分析におけるグラフの選び方は、分析の目的、データの種類、そして誰に伝えたいかによって変わります。棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフ、ヒストグラム、箱ひげ図、散布図といった基本的なグラフの種類とその用途を理解することは、データを正確に読み解き、効果的に伝えるための第一歩となります。
まずは、お手元にあるデータを使って、ここで紹介したグラフをいくつか作成してみることから始めてみましょう。ExcelやGoogle Sheetsといった馴染みのあるツールでも、これらの基本的なグラフは簡単に作成できます。実際に手を動かすことで、どのグラフが自分のデータや目的に合っているのか、より深く理解できるようになるはずです。適切なグラフを選ぶスキルを磨くことは、あなたのデータ分析力を確実に向上させるでしょう。